こんにちは。
久しぶりにclinical reasoning編書きますね。
今回は主観的評価(問診)についてです。
基本的には整形外科の外来で使うのが主の内容になると思います。
でも所々病院の入院患者にも使用できる部分が入ってると思いますので、参考にしてみてください。
目次
主観的評価(問診)とは
主観的評価(問診)は、簡単に言えば、患者に話を聞く事です。笑
今その患者さんがどのような状態なのかを正確に知るために特に大事な部分になります。
clinical reasoning をしていくに当たって,特に重要となる部分になります。
経験のあるセラピストが行うとこれをしただけで評価のほとんどが終わると言われるくらい重要な部分になります。
患者さんとの信頼関係やこの患者さんがどういう人なのか把握する上でもしっかりと行わなければいけない所です。
主観的評価(問診)の目的
- 対話を通じて診断的推論および物語推論に役立つと思われる情報を引き出す
- 身体機能評価、禁忌・注意事項の有無などの指標を得る
- 治療中の場合には、前回の治療効果を知る
この3つです。
以前出た勉強会でK先生の資料の言葉をお借りすると・・・
主観的評価とは、問診によって患者の病歴、症状等の情報を収集し、そこから3つの目的に関連する情報を引き出そうとするものである。従って、『役に立つ情報』を引き出さなければならない。役に立つ情報かどうかは、セラピスト側の知識が系統だったものであり、使える知識として使用可能な状態になっているかどうかに依存する。
患者の持つ準拠枠、信条、信仰、期待、問題空間などにより、症状の捉え方は様々であるとともに、その表出方法も多様である。セラピストの問題空間の差がある事も多い。従って、必要に応じて患者の言葉を『』などでくくり、記録しておくのが望ましい。
こんな言葉を述べておられました。
だいぶに言われていた事ですが、基本的なスタイルは変わっていないので、これも変わっていないでしょう。笑
まあ要するに、患者さんには患者さんの世界があって、それをまず理解しなさいよと。
自分の世界に当てはめるのではなく、相手の言葉をいったん全て咀嚼し、患者さんの世界を理解した上で、この患者さんに何が必要なのかを考えましょう。
どんな言葉でもその人の感じている言葉なので、それを否定せず、どうしてそのような考えに至っているのか背景をしっかり知りましょう。
こんな感じですかね?
間違ってたら指摘してください🙇
では主観的評価(問診)の中身について述べようと思います。
主観的評価(問診)の項目
- 症状の部位・種類
- 症状増悪因子
- 症状軽減因子
- 症状の日内変動
- 禁忌および注意事項を把握するための質問
- 現病歴
- 既往歴
基本的にはこの7つです。
聞く順番もこの並びのように聞いていくことが多いです。
1.症状の部位・種類
これは基本的には、ボディーチャート(body chart)というものを使って書きます。
このbody chartの中には、
- 症状の部位
- 症状の種類
- 症状の深さ
- 症状の性質
- 各症状間の関連性
これらを記す事になります。
これを聞いてどんなことを推測するかというと、
例えば症状の種類は・・・
- 広範に広がる痛み:深部の靭帯損傷
- ズキズキする、刺すような痛み:急性期の靭帯損傷
- 拍動性の痛み:炎症性の損傷
- 灼熱痛:神経根症状
こんな感じの予測が出来ます。
これはあくまで一例です。
まだまだたくさん表現があると思いますし、
患者さんがこういう表現をされても実際の障害部位は違う場合もあります。
後は、症状の深さで表現すると、
- 表在性:関節包などの関節周囲組織
- 深部性:関節内組織
こんな感じですかね。
症状の性質に関しては、症状の活動性を確認します。
活動性は、症状が持続的な痛みなのか、間欠的(動かさなければ痛くないけど、動かすと痛い)な痛みなのか。
持続的な痛みであれば、まだ炎症期の様な時期なのかもしれません。
こんな感じで聞いてきます。
一例でbody chartを書くとこんな感じになります。

2.症状増悪因子
これは、どのような動作もしくは肢位を取った時に症状が出現もしくは増悪するのか聴取します。
なるべく多くの動作/肢位を聞き出し、重症度の高い順いに整理して記録する事で、その後の治療の際に
治療効果判定の材料として用いる事が出来ます。
症状の増悪(再現)する動作を聞けた後は、その動作によって生じる症状が、どのくらいで治まるのかを聞きます。
これを聞く事で、症状に対する過敏性(irritability)を知る事が出来ます。
過敏性を聞く事で、その動作を評価の中で用いていいのかどうかが判断できます。
患者がその動作をした後痛くて動けなくなるのに、セラピストは無理にその動作の評価はしないと思います。
それを知るための、過敏性の問診だと思ってください。
症状増悪因子の所をまとめると・・・
- 症状が出現、増悪する動作、肢位を聞く
- その動作・肢位を可能な限りたくさん引き出す
- 重症度の高い順に整理する
- 治療効果や症状の変動を比較できる材料を見つける(comparable sign)
- 症状に対する過敏性について聞く
まとめるとこんな感じです。
3.症状軽減因子
症状が軽減するような動作・肢位・補助具などを聴取します。
これは、症状増悪因子と同様、損傷組織やメカニズムを考える上で重要になってきます。
例えば、サポーターをつけると楽になる・・・
これは何が考えられるか?
- 支持性がアップした?
- 保温効果?
- 固有受容性フィードバックが変化した?
まだあるかもしれませんが、このような事も判断材料になります。
4.症状の日内変動
1日を起床時(朝)、午前、午後、就寝時(夜)などに大別し、症状の変化を聴取します。
これにより、炎症のステージ、疾患特有の病態をつかむ事が出来る可能性があります。
また、その症状がいつ沈静化するのか聴取する事も重要です。
例えば・・・
- 朝の症状増悪:急性の炎症症状、椎間板の症状
- 夕方から徐々に症状増悪:疲労性障害、筋持久力などの低下による姿勢性障害
これも治療していくに当たって重要な情報になってくると思います。
5.禁忌および注意事項を把握するための質問
症状、疾患、既往によっては、身体機能評価や治療において禁忌や要注意事項が存在する場合があります。
これらを確認するために以下のような項目についても質問します。
- 現在の健康状態、体力レベル
- 極端な体重減少、ダイエット
- ステロイド治療の既往もしくはそれを行う可能性のある疾患の有無
- 薬物使用
- 椎骨−脳低動脈異常に関する5D(dizzy:めまい,diplopia:複視,dysarthria:構音障害,dysphasia:嚥下障害,drop attack:落下発作)
- 脊髄由来の症状の有無(馬尾損傷に関連した便秘の有無)
- 占拠性疾患(space occupied lesion)の有無
この辺に関しては完全にリスク管理についてになります。
ステロイドを長期服用している人は、骨粗鬆症のリスクがあるので、モビライゼーションを制限したり、
極端な体重減少が見られて、なおかつ夜間の痛みが強い人などは、悪性腫瘍などの疑いも考えられたりします。
理学療法を行うに当たって、何もリスクがなければそれで何も問題ないですが、
このような患者さんももしかしたらいるかもしれないということは頭に入れておいていいと思います。
6.現病歴
現病歴って最後の方に聞くんだ!って思った人も、もしかしたらいるかもしれません。
その方が2度3度と病歴を聞き直す必要がなく、経時的に症状の変化を把握出来るからです。
ちなみに現病歴は、外傷性が疑われる場合と自然発生が疑われる場合と分けて考えます。
「外傷性が疑われる場合」
- 何が起こったのか?
- その時に加わった外力の方向、強さ、衝撃の度合い(加速度)は?
- 最初にどのような症状が現れたのか?
- 受傷直後の症状は?
「自然発生が疑われる場合」
- 最初に感じたのはどんな感じ(疼痛・硬直など)?
- 素因となる可能性のある要素は?
- 普段行わないような動作もしくは極端に激しい運動などは?
- 発症した時の身体の疲労度合いは?
両者に共通している内容については、
- 発症からの症状の経過
- 治療・処置の有無、それに対する反応
これらについて聞いていきます。
これによりほぼ全体像が把握出来る事になります。
7.既往歴
既往歴は、過去の病歴を聴取するのも大事ですが、
現在の症状が初めてなのか、以前に経験があるのかどうかを聴取するのが大切になります。
もし、以前に同様な疼痛経験があれば、その時の治療経験や、治癒までの期間等を聴取する事で、
治療プランにも反映させる事が出来るかもしれません。
例えば、以前はこの治療が良かった、悪かったなど・・・
まとめると・・・
- これまでの疾患・傷害(リスク管理目的)
- 同様の疾患の経験の有無(疾患の類似性、治療経験、結果、治療に対する満足度、治癒期間等)
その他
上記の部分は主に教科書的な部分ですね。
その他にも聞いたことが良いことはたくさんあると思います。
例えば・・・
- 患者さんの普段の生活で何が変わらず出来て、何が出来なくなったか
- 仕事や、家庭内の役割、スポーツ、レジャーについて
- 患者さん自身が、現在の状態についてどのように考えているか
また話しながら、この患者さんはどのような人なのかを考えることもします。
陽気な人?お硬い人?受け身な人?積極的な人?活動的な人?内向的な人?などなど
あと表情もみながら話せると良いですね。
こんな感じですかね?
これで一通りの問診は終了です。
けっこう長いですよね・・・笑
これしっかりやるとすると2単位で治療に当たれる所でやるしかないと思います。
1単位ではちょっときつい・・・
なので、上手く必要な部分を聞いていく必要はあると思います。
後、基本的に、これだけしっかり聞くと、
人によっては、早くマッサージしろよくらいの感じで見る方もたまにいますが、
ほとんどの人は自分としっかり向き合ってくれてると感じ、最初の信頼関係はけっこうしっかり作れると思います。
最後に
いかがでしたか?
問診ってめちゃくちゃ大事な情報がいっぱい詰まってるので、出来るだけ、
聞いてください。
問診しないで機能だけで考えようとしても上手くいかない事が多いです。
治療は、患者さんとの信頼関係が出来て初めて上手く進んでいくものと思うので、
時間がなかなか取れない人は、かいつまんでも良いので、
上手く患者さんの情報を引き出すための一つの引き出しとして使っていただければ幸いです。
客観的評価についてもこちらで書いているので是非合わせてご覧ください。
その他のclinical reasoning の記事はこちらになります。
よろしかったら読んでみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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