こんにちは。
皆さんは肩こりがなぜ起きるのか知っていますか?
平成28年に厚生労働省が調べたものによると、肩こりは女性が訴える症状で第1位、男性でも第2位と多くの人が悩まされている症状の一つです。(参考文献Ⅰ)
今回は、肩こりのメカニズムとなぜ女性に肩こりが多いのかを解説します。
興味ある方は是非ご覧ください。
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目次
肩こりってなに?
そもそも、肩こりってどんなものなのでしょうか?
2006年まで東京女子医科大学で教授を務められた伊藤達雄先生によると、・・・
肩こりは「後頚部から肩、および肩甲背部にかけての筋肉の緊張感を中心とする不快感、違和感、鈍痛などの症状、愁訴」とされています。(参考文献Ⅱ)
*言葉の説明
・後頚部:首の骨がある部分
・鈍痛:鈍い、重苦しい痛み
・愁訴:苦しみ・悲しみなどを嘆いて訴えること
肩がこると言っても人それぞれ感じ方は違い、首や肩・腕などが「重い」「だるい」「張る」「硬い」「痛い」等・・・。
これらの症状をまとめて「肩こり」と呼んでいます。
ちなみに・・・
海外では、肩こりの事を「Sub-clinical neck pain」(病院に行かないような首の痛み)と表現されるそうです。
肩こりの種類
皆さんは肩こりに、種類があるのは知っていますか?
大きく2つの分類に大別されます。(参考文献Ⅲ)
・肩こりの原因となる疾患がはっきりしない「1次性肩こり(本態性肩こり)」
・原因となる疾患がはっきりしている「2次性肩こり(症候性肩こり)」
1次性肩こりを引き起こす原因としては、以下のものがあります。
- 不良姿勢
- 運動不足による筋力低下
- 過労
- 身体の冷え
- ストレス
- 加齢
2次性肩こりを起こす原因としては、以下のものがあります。
- 首に関連した障害(首周辺の痛み、首の骨やヘルニアの圧迫による痺れなど)
- 肩関節の障害(肩の炎症、肩の腱の損傷や断裂、肩にある神経の圧迫による痺れなど)
- 頭痛と関連して生じるもの(片頭痛、頭と首を繋ぐ筋肉が硬くなる)
- 心臓系の病気(循環器に関連した疾患:高血圧、心筋梗塞等)
一般的には、上記の様な問題で肩こりが起きることが多いとされています。
その他にも、胃や腸などの消化器の問題、呼吸器の問題、脳梗塞後身体の筋肉の緊張が高くなることで肩こりが生じることもあります。
肩こりのメカニズムとは?
肩こりを生じさせるメカニズムは下図のようになります。

このサイクルにより痛みや不快感が増していき、慢性化した肩こりになるのです。一般的にこのようなサイクルで慢性化していき、肩こりが悪化していきます。
肩こりが起きる原因は?
では、なぜ肩こりが起きるのでしょうか?
一番の原因は、上記の図にもある様に筋肉の血流が悪くなることです。
血流を悪くする、筋肉のこわばりを生んでしまう原因は以下の4つがあります。
- 姿勢
- 目の酷使
- 社会的・精神的なストレス
- 身体を冷やすなどの温度変化
では上記4つについて順番に見ていきましょう。
姿勢
長時間同じ姿勢での作業や運転により、肩をすくめる様な姿勢を取りやすくなり、その影響で、首から肩に着いている筋肉(僧帽筋や肩甲挙筋など)が過度に緊張します。
また、机や椅子の高さが合わない等で猫背のような姿勢になり、首が前に出ることで、首の後ろにある頭の骨と首の骨を繋いでいる後頭下筋が過度に緊張します。
これらにより、肩や首周囲の血流が悪くなり、肩こりを引き起こします。
目の酷使
長時間のパソコン作業、細かい文字や細かい手作業、メガネやコンタクトの度数が合わないと目が疲れてくきます。
これにより肩こりに繋がるメカニズムが3つ考えられます。
- 何かを注視する際、頭を動かさず目だけを動かすが、その際に頭が動かないように調節するのが後頭下筋。 注視しすぎると、常に頭が動かないように固定され、首の筋肉の疲労に繋がる。
- 眼の神経は後頭下筋と繋がっている。 神経を介して、目の疲労から首の筋肉の疲労へ繋がる。
- 目の周りの筋肉は頭蓋前頭筋(とうがいぜんとうきん)という頭の筋肉の膜を介して首の後ろの筋肉に繋がっており、膜を介して首の筋肉を疲労させる。
この構造により、目の疲労に伴って首の筋肉も疲労し、肩こりに繋がる要因の一つになります。
社会的・精神的なストレス
職場で常時緊張を強いられる場面が長時間続いたり、人間関係(友人・嫁姑・職場)で悩みを抱えたりすることで、ストレスが溜まると思います。
ストレスというのは、血中の免疫作用が低下するとされており、痛みの増強とも関連しています。
肩こりを感じている状態に加えて、ストレスにさらされることで、より凝りや痛みを強めてしまう要因になってしまいます。(参考文献Ⅳ)
身体を冷やすなどの温度変化
冬時期の寒さや暖房の効いた部屋から寒い所へ出たり、夏場急に冷房が効きすぎた部屋に入ることで、急に温度が変わってしまうと、身体は体温が急激に変わってしまわないように、体温を維持させる機能が働きます。
その時に身体の中にあるエネルギーを消費するのですが、その時一番起こる反応として、身体に力が入るという反応です。
寒い時に力を入れるとほとんどの人は肩をすくめる様な姿勢を取ることが多いと思います。
そのような姿勢が日常的にあることで、肩こりに繋がります。
その際、自律神経も働いているので、肩周辺の血管を収縮させ、血液循環も悪くなることも肩こりに繋がります。
*自律神経とは、血管や内臓の働きを支配している神経で、身体の内部を無意識にコントロールしています。交感神経と副交感神経に分かれており、交感神経は、心身を活動的な状態にする神経、副交感神経は、心身をリラックスさせ、休んでいる時に働く神経です。
以上4つの原因で、肩周辺の筋肉が緊張したり、血流が悪くなることで肩こりが生じます。
なぜ女性に肩こりが多いの?
最初に紹介したように、肩こりは女性が訴える症状の第1位として長年挙げられています。 ではなぜ女性に肩こりが多いのでしょうか?
その理由でよく挙げられるものを3つ紹介します。
- 筋肉量の違い
- 冷え性が多い
- 女性の生活様式
では順番に見ていきましょう。
筋肉量の違い
まず女性は男性よりも筋肉量が少ないことがあげられます。
頭の重さは、体重比で約8~13%(約10%)と言われています。 体重が50kgなら約5kgになります。
頭の重さは基本的に男性女性ともに比率はそこまで差はありません。
なので、女性は男性より少ない筋肉量で頭の重量を支えなければいけないため、肩こりが起きやすいと言われています。
冷え性が多い
女性は男性よりも冷え性の方が多いと言われています。 冷え性になりやすい原因としては、以下の通りになります。
- 月経があることで、定期的に大量の血液が失われる
- 流行のファッションを取り入れることで薄着な服装になることが多い
- 無理なダイエットにより筋肉量が減少することで、基礎代謝の急激な減少で身体から熱が出にくく、貧血で血流が悪くなる
- 筋肉よりも脂肪の割合が多い(脂肪は冷えると温まりにくい)
- 女性ホルモンと自律神経のバランスが崩れることで、体温調節機能が乱れる。
*代謝が落ちることで、身体全体で熱を生み出す機能が落ちてしまうため、体温が下がってしまいます。
主にはこの5つが冷え性の原因になってきます。
これらにより血流が悪くなり、肩がこりやすくなる原因になると言われています。
女性の生活様式
女性は育児で子どもに母乳をあげる、赤ちゃんを抱く等、男性よりも多くの育児をこなすことが多いです。
特に子どもが小さいうちや首が据わってない時期は、あまり揺れないように抱きます。
そうすると、抱きかかえている間はほとんど姿勢を変えることが出来ません。
また、寝た後に少しでも揺れると起きてしまう子もいるので、あまり揺れないように力が入った状態で子どもを支えることもあると思います。
肩周りに力が入った姿勢で、子どもを支えていなければいけない時間が多く、男性よりも筋量が少ないため、肩の筋肉が疲れやすくなっています。
こんな症状がある人は肩こりじゃないかも?
基本的に筋肉の緊張によって起こる肩こりであれば、以下のようなことを行う事で症状が改善することが多いです。
- マッサージなどで筋肉をほぐす
- 温めたりして血行を改善させる
しかし、以下のような症状がある場合は、肩が張っている状態とは少し違うので、出来るだけ整形外科などの専門の医者に診てもらうことをお勧めします。
- 痛み(じっとしていても痛い、激痛、刺すような痛みが何日も続いたり、夜に痛くて眠れない状態)や痺れ、
- めまいなどの症状
- マッサージなどの治療をしても良くならない
- 何をしていてももしくは少しでも動かすだけで痛い
- 痺れている
最後に
いかがでしたか?
今回は、肩こりのメカニズムやなぜ女性に肩こりが多いのかを説明しました。
肩こりには色々な原因がはらんでいることが多いので、もし症状がなかなか軽減しない人は、参考にしてみてください。
肩こりに対してのストレッチ方法(特に胸椎部分)
下肢のストレッチは以下に紹介しているので是非ご覧ください。
ストレッチは以下の様なものも参考にしてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
参考文献
Ⅰ)厚生労働省:平成28年 国民生活基礎調査の概況.p18.
Ⅱ)伊藤 達雄:特集・肩こりの臨床.肩こり診断のポイント.CLINICIAN’97 No.461.p495-498.
Ⅲ)森本 昌宏:肩こりの臨床 適切な診断と治療のために.近畿大医誌(Med J Kinki Univ)第53巻3,4号,151-156,2010.
Ⅳ)仙波 恵美子:ストレスにより痛みが増強する脳メカニズム.日本緩和医療薬学雑誌(Jpn.J.Pharm.Palliat.Care.Sci.) 3:73-84,2010.
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